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詩集・こおろぎ

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詩集・こおろぎ
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この器にいのちのが
まだ、残されているのなら
あしたも鳴き続けよう
夜露に湿った羽根の 乾くのを待ち
できるだけたくさん
陽の光のこぼれている草むらまで
這って行き


「こおろぎ、11月」 より   > >



All Copyrights Reserved (c), HATORI Akemi
with many thanks to HATORI Makoto 羽鳥誠

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2018/01/03 11:25



蛙が
鳴いている
鳴いている
春の夜

鳴きながら
なき声を
呑み込む

鳴きながら
溢れる自分を
食べる

自分を食べながら
蛙は蛙となる

やがて霜のふる夜
湿った草の中にも
深い沼のそばにも
蛙はいない

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うつわ

2016/11/08 12:20



花の縁とりがほどけると
じきに 
花は あふれてしまう

器の中に
風が 流れる

咲いて散ってゆくほかに
どんな使命があるのだろう

器は いつでも
しずかに満ちている

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枯れ葉

2016/11/07 11:54



風もないから
きょうは 自分のちからで
おちてみよう

だれもいない午後

山の向こうは 雪だ

今こそ
自分の中に深く沈みこみ
その重さの中で

まっすぐ
まっすぐ
おちてゆこう

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2016/08/13 11:55



小枝をさらい
雪を吹きあげ
柵を倒し

大きな迷いの中を
吹き荒れる風

− ああ ここではない
こんなところじゃない −

飛び越し飛び越え
繰り返し繰り返し
騒ぐ騒ぐ

吹き抜けることさえできず
空は音ひとつ呑みこんで
どこまでも どこまでも

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落陽

2016/08/11 12:35



あたかも
ひとつの
熟しきった実のように

ずっしりと
裸枝をたわわせながら
夕陽がおちてゆく

熱く 紅く
ふかい祈りのなかを
雑木林を通りぬけ

枝から枝へ
捧げしものが
運ばれてゆく

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2016/07/15 09:57



ふいてくる風がある
菜の花畑の ちょうの肩

風は ひと呼吸の休みさえ
奪っていった

ふきとばされ ふきとばされ
草の森

やがて 陽も沈むというのに

とおい林で
かっこうの 声

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2016/06/18 10:59



戻ってくる鳥がいる
小雨にぬれて柳の枝へ

ひなをかえした巣は
あの日のまま

飛び歩いたどの枝も
少しづつ腕を広げ

発つてゆく日咲いていた
真っ白い花は
赤い実をつけている

今度こそあの峠を
越えてゆくことができるだろう


胸の白い鳥が
この頃
庭にでている

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別れ

2016/06/14 12:10



ポプラの若葉が
葉うらを
かえし かえし
ちらちら手をふる六月の風

くりかえし
いいつづけてきた
さよならの挨拶

どんなさよならも
かえってきたためしはない

発ってゆくひとの
さびしいむねに

あかるいさよならひとつ
戻っておいで

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越えてゆく

2016/04/30 06:31



こんなことが
初めからわかっていたなら
止していたのだろうか
あの時
肩に手を置かれ 静かに促され
生を渡されたあの時

多分
流れ着く落ち葉の上にさえ
疑いもなく下りていただろう
一度でも遠く
母の呼びかけを耳にしたなら

越えてゆく
祈りながら越えてゆく
叩きつけられ押し返され
喘ぎながらもがきながら
越えて着地する先など
描けないまま
声を枯らし足をもつれさせ

「 ずいぶん色づいたなあ 」
老いたひとの呟きは八十五の響き
ナナカマドの坂道の向こうには
連れていってくれそうな
広々とした空
心が 不意に解け出し
問い詰めそうになる

( ここを突き抜けると何があるのですか )

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足りない笑顔

2016/04/30 06:25




写真にうつる時は
チーズといいなさい
そういわれたけれど
あつらえの笑顔は いやだな
もっている量の笑顔で
どこがいけない
手持ちこれだけの
ほほえみ

気掛かりな人に
「 元気ありますか 」の
便りをすれば
「 まぁまぁ元気です 」と
返ってきた

ぽつんと小さい ぁ
そこで計れてしまう元気度
「 どこかで虫がないています
階段のあたりで、、、、 」
何も問いかけず
探りもせず

小島のような ぁ のところへ
今すぐ届け
ただ一途な虫の声

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歯車

2016/04/30 06:21



寄り添って営まれていた日常を
ことごとく打ち砕いた
数にはなれないあなたやわたしを
慌しくひきさらっていった
何百年もの計画だったということか
恐ろしい計画だ

恐ろしいでもなんでもないことを
ただやり遂げたにすぎないのか

わたしたちとは異なりすぎる歯車を
隣で同時に回し続けている
なぜ これほどまでに
こうするほかなかったと?

四月
決められたとおり桜の花を淡く咲かせた
これが同じ国からの便りだろうか
ひれ伏したまま戸惑いの中
封も切られず私はいる

響き合う歯車の音は
どこの谷間を流れているだろう



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こおろぎ、11月

2016/04/28 15:22



この器にいのちのが
まだ 残されているのなら
あしたも鳴き続けよう
夜露に湿った羽根の乾くのを待ち
できるだけたくさん
陽の光のこぼれている草むらまで
這って行き

もし 今夜限りのいのちであるのなら
このまま黙って眠りに入ろう
仲間と競い合った歌の数々を
枯れ草の枕に並べ
少し離れた場所で鳴く痩せた声に
送られて

月はなお 雑木林の向こうから
幾つもの夜を約束してくれるけれど

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2016/04/14 15:20



それでも
鳥は飛んでゆきましたね

うたいながらさけびながら

それは
あふれる希望のようでもあったし

ひょっとすると
不安をおしかくすためだったかもしれない

雨の上がったその朝、
ひときわ高い声を
森は
感じていた 


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野草

2008/11/02 10:12




あまりに黙ったままだから
交わし合うすべを見つけられず
会釈もしないで離れてきたけれど
きちんと伝えてくるのだった
せめて
柔らかな五月の土に
この手で触れ

吹き上げてくる風
たたきつける雨の日
踏み外すことなく
崖の上に立つ姿は
暗闇に出会う明りのようだったと

ただそこに在ること
そこで生きることをやればいい
繰り返しの中に
答えがあるはず
毎日
そう教わってきたと

開いた辞書のあいだから
滑り落ちたスミレに続いている
空の下
ひびきあった仲間に
せめて 今からでも



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ヤブコウジ

2007/01/26 09:42




「 ここにいます 」
確かにそう呼びかけてきた
はっきりと

艶やかな四枚の葉の下に
うつむいた赤い実
光が木々の間を
震えてたどり着き

あした
五十人の見物人が来ても
姿勢を変えはしないだろう

降りかかる落ち葉に
埋もれながら実ってゆくのは
誰と交わし合った約束?

ざわつく心 求めたがる心に
その小枝を置けば
旅の途中にある風のひとつでも
はるばると
私を吹き上げに来るだろうか



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小児科待合室

2006/12/11 09:10




( これを済ませたなら
すぐに仕事へ戻り
残したものを片付けなければ
この子の熱は
何度あっただろう、、、 )

急がないで
抱っこして連れていって
ぼくは今
おかあさんの腕の中の
小さな部屋へ
飛び込みたいんだ
でもスタスタいってしまう

忘れてしまったの
おかあさんにもあったはず
ことばを知る
もっと前の気持ちだよ
こころに下りてみれば
見えてくるのに
計ってほしいものが
ほかにあるってことが

いつかぼくに
おかあさんをおいていく日が
きっとくる
記憶の中の扉を閉じ
ことばより先にあったものを
忘れかけ
振り向かないでいく朝が




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告知

2006/08/20 09:28





いつまでも遊ばせてはくれない
夕方のサイレンがなると
子どもは家へ
帰らねばならなかった

それが
今は なぜ

ゆるやかな笑い声と
つましいよろこびに
浸っていたいのに
このまま憩わせてくれないのは
なぜ

日が暮れて
星がひとつふたつ光るころ
家よりももっと遥かな先へ
戻り始めなくてはならない
なじんだ明かりが灯る傍の
細い横道を
まっすぐ通り抜けて

布団は柔らかに干し上がり
夕食の支度も整い
窓の外を
何度もうかがう家族の影が
ここから見えていても

サイレンの音が
耳の奥にこだまする






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林で見たもの

2006/04/24 19:27




だれが持ち去っていった
小さな頭を
兎である
猫かもしれない
と 想像できる
わかりやすいところを

胴体だけが影のように
転がっている
木々の間を
バサバサ飛び交っているカラスの群れ
尾のあたりから
やわらかい腸をめがけ
食いついていったのは
どんなモノ

生きていることが
途方もなく
まっしぐら
恐怖も哀れも
及ばないところで

のどかな光にさらされ
頭は今
どこに在る






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春のすがた

2006/04/14 21:13




いくつめの夜だったのか
呼ぶ声を聞いたのだろう
丘の向こうから
それとも
胸の奥から

跳び上がった瞬間
車は蛙をはねていた
まだ跳べそうな
しなやかな足
それでも奪われていった
若い体温

グワッ グワッ グワッ
呼ぶ声は今夜
湿った斜面を
上ってくるにちがいない
黒土にまみれたままの
冷たい前足に
月はどんな明りを重ねるだろう

山桜が遠くに揺れて
もうひとつの春もみえる





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浅い春の日に

2006/03/20 21:11




窓の隙間に
身体を平らにし
強い風から身を守ってる
透き通った虫がいる


私はその虫を
どれほど春が進んだら
助けなくなるのだろう

どこまで心が回復したなら
窓を明ける気遣いを
なくすのだろう

こんなにも
いい加減なものの中を
生きているなんて
独り善がりな優しさを
ちらつかせ



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群れ

2006/01/19 09:24




つ となって
し となって
い となり
冬空を昇っていく
風に運ばれ 風を操り
光にのまれ 光を捕え

瞳を青く染め
時に魚になり
三十一羽の鳥が
ひとすじ
つ になり
し になり
十八と十三羽が
い になって分かれ
うねりながら泳いでいく

空に描かれた
憧れ
蓄えた力を
しなやかな羽ばたきに乗せ
西をめざす

輝いているものは
自分たちであることに
だれも気づかず
見上げるわたしの内に
灯された明かりの
ひとつにも
思い至らず





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初冬

2005/12/19 20:33




土色に変わったカマキリが
わずかな陽光を浴びて
生け垣の奥へ
入り込もうとしている
一瞬振り上げたカマを
胸の前でゆっくり折りたたみ
何かを確かめるしぐさを見せ

今更の暖かさは
冷たさに等しく
踏み出した脚も触角も
温めてはいない

部屋へ戻り私は
熱いミルクを飲んだ
文字盤の消えた時計を
思い浮かべて

風は落ち葉の吹きだまりを作り
濁った雲を
つぎつぎ並べていく
迫っているものの渦から
束の間身を隠し
ミルクを飲む場所が
なぜ
カマキリにないのだろう







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向こう

2005/11/06 08:36




向こうへ行ったなら
どんな方法で
めぐり会えばいいだろう
今のうちに
決めておきたいのだが
そこでかわす 合言葉を
捜し疲れのないように
はぐれないように

いつ切り出せばいいのだろう
病院のベッドでは重すぎる
よく晴れた清々しい青空のもと
あっけからんと
約束がしたい

「 日高の山並みに雪が白く広がり
裾野の紅葉が
日ごと変わりはじめてね 、、、 」

そうだ
いつになく弾む会話の隙間に
乾いた心を用意して
そこで約束をしよう
八十を超えた父と
堅く 正確に
合言葉を




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わかれ

2005/10/17 08:35




さようならを
いいたくはなかった
「 またどこかで 」に
すり替えてきた
いつの頃からか
それでも
言うべき時がやってきた

今年初めて実をつけた
桃の木に
秘密めいた匂いを
遠く漂わせてくる春蘭に
夕方ひっそりやってきた
ルリビタキにも

きちんとした別れがいえたのは
歯科で抜いた一本の歯と
手の中で
意識の薄れていった鳥にだけ

もうじき私は
ここを離れてゆく
おしまいには何ひとつ
連れていくものはないと
心に決めて

フクロウを休ませ
幹を伸ばし枝を広げ
空を塞いで立つ樫の大木
私よりも長いいのちを
生きていくだろう
さようなら
いっそう深く
老いてゆくのだよ




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草の道で

2005/10/03 08:51




またどこかで
泣かせにきっとくるのだから
存分泣こう

海へでも 山へでも
飛んでいって
大声あげて
泣き散らかせたなら
いいのだけれど
そこへ辿り着く前に
滞っていた涙は夜更けに
じくじくと締めてくるから
優しさを嗅ぎとった瞬間
前ぶれなく零れ出すから
素早く片付けてしまおう

相手をひきずりこむだけの
涙など
ただ思いきり草の緑深く押し込めて
すべて捨ててゆくんだ

八月の雲ひとつ
見ているだけでいい





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にわとり

2005/09/01 18:37




その鶏は
裏の林から
ある日やってきた
並んで
鶏の時間を生きてみる
心を届かせなくては
ならない人がいたり
電話は ふいに
わたしを呼びつけるだろう
生きている日々は
人の時間 鶏の時間の区別なく
重すぎることを くりかえす
互いを瞳の奥で確認し合い
小さな安心を
こぼさぬよう
冬の陽ざしの中にあたためている
( ソコニ 居タノデスネ )
( ズット 此ニ居マスヨ )



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一月たんぽぽ

2005/07/28 18:40




きのうまでの
生きてきた日々に
止めを刺すかのような
冷たい朝だった
あとどれくらい
こんな日が届くのだろう

ここが 約束された
ただひとつの場所ならば
突き上げる力を感じた日
すぐにも咲き始めるほかなかった
今この時
白い羽根の蝶は
どこからも舞ってはこない
蝶が数えていた春と
重なりあえなかっただけ
待つほどの時はなく

ここは 約束された
たったひとつの場所
畑地は
黒く艶やかに輝いて
遠く手招きをし
太陽は
きょうの暖かさだけを
草むらに置いて
頭の上を過ぎてゆく




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置いていったもの

2005/07/10 09:13




夕暮れの白い月を背に
群れて帰っていく鳥たち
だれが 何を捉えて
もう出発の時と
翼を広げるのだろう
この空のどこへ向けてでも
発ってゆけるのに
踏み外さないのはなぜ

いつかどこかで
ゆらりと踏み外したからか
中心がずれたまま
自分が見えない

取り巻いている大きな力
見えないものの手に
身を委ね
通過していった鳥たち
力強い羽ばたきを
一瞬空に刻みつけて

色づきはじめた月に
ていねいに仕上げられていく
一枚の置手紙を
姿勢を正して
わたしは読む







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かなしみ

2005/06/15 08:59




夜の片隅で泣く
念入りに物陰に隠れて
泣いていることを見られたくはない
だれにも 自分にも

夜の片隅で
闇に染まって泣く
月もないのにうつむいて
泣くことをここで終りにしたい
あすはいけない

橋を渡って次の場所へ行けるなら
ふりしぼって泣くしかない
何をわからせるための涙なのかと
繰り返し問いながら

朝が下りてくる頃には
この部屋を出ていよう
初めてのあした
二度と会えないあしたへ
失礼のないように










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十月

2005/05/26 18:40




秋の森へ入る
いつのまにか
足元に目の高さに
飾られている実の数々

あなたの中のものは
できてきましたかと
尋ねる声

わたしは
耕やし続けなくてはいけない
柔らかな土に
さっくりと鍬をおろし
種を蒔き

もっと地中深く
根を張らせなくてはいけない
木立に注ぐ
ひと握りの光と雨粒を
分けてもらい

ただ一本の裸の木に戻って
何もないことと
向き合わなくてはいけない
乾いた風ばかりぶつけてくる
凍えそうな夜に
怯えることなく

赤い実が灯されている繁みを
踏みしめないよう
黙って森を出る








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四歳の春

2005/05/21 18:16




夜更けの床の中で娘が呼ぶ
「 オカアサン、オカアサン 、、、 」
手と手をつないで眠りのつづき
ぬくもりが 眠りをつないでいく
にぎりかえすことでみたされていく娘

こんなかけがえのない信頼も
いつかは飛び去ってゆくのですね

手を触れあう時が今ならば
後姿を見せてあなたが出てゆく日も
きっとこの先にあるのですね

あなたはどんなさよならをその日
この私においてゆくのですか
私はどんな答えを
あなたの背に見送るのでしょう

お話の本をあとひとつと泣いた娘の
きょうの不満も
通いあう温かさの中に
消えてゆくけれど
どれほど強く抱きしめても
救いきることのできない日が
真近いことを
暗闇に私は感じている





文芸おとふけ 20 (音更文化協会) 昭和63年12月20日発行、掲載,
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母に

2005/05/15 20:39




この冬
あなたからの切り干し大根と
乾ぴょうが届かなくとも
わたしはかまいません
そのことよりも
病室の窓辺に
あたたかな風があるでしょうか

できるならば
あの崖下の小川のそばへ
心を飛ばし
いつの日かそうしたように
あなたの回復を祈ることづけを
雪の川面に今夜のせたいのです

九つの頃のわたしでゆけば
川は少しずつ思い出しながら
運んでいってくれるでしょう
願いごとの叶う
遥かな 岸辺のあたりまで




第17回ギフトブック・詩のコレクションコンテスト(新風舎)優秀賞、平成17年
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野ウサギ

2005/05/07 21:12




枯れ草のすきまをくぐりぬけて
春の道を見てきました
山つつじの花が 落ち着いて
ひらいていました
風の波に うす緑のやわらかい葉が
泳いでいました
すみれの隣りでは 憧れのすみれを
咲かないように
タンポポが咲いていました

怖いものと 知りたいものとが
どうしてぴったり
くっついているのでしょう

光の向こうは また光が続いているので
どんどん先へ行きたくなりました
おぼろ月夜も心地よいけれど
本当は きらきらした光の束を
一度に浴びてみたかった

左の耳で憧れを 右の耳で恐れを
聞き分けていましたが
突然、右の耳が
これ以上行かせないものをとらえたので
あわてて急な崖を
跳びおりてきたのです

開けなくてよい扉が
きっとあるのでしょう
あれこれ知って
それがなんになろうことが きっと

すみれを咲かなかった
タンポポのようになりたいものです 
こころざしをいっぽん
貫いて






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この場所から

2005/05/05 09:31




小高い丘に立てば
どこまで戻られるだろうと
駆けてきた
ほととぎすが鳴き声をひっぱりながら
枝の先を渡っていく

わたしにもあった
歌わずにいられない季節
今寄り添っているものは
生きていることの うら哀しい体温
鳥の背に見えた鋭敏さは
かけらほどもみつからず
きょうの微熱を心細く計っている
見すぎることなく
聞きすぎることもない場所から
立っていった鳥の 明るさ
わたしの小枝に
まぶしくからませて

吹き上げてくる風の中で
この身を立て直し
うずくまる自分を
早く連れてかえろう







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四月の雨を聴く

2005/04/30 08:46




できたての若葉に
今夜の雨は冷たすぎる
なんと無慈悲な雨

( 何カニナルタメノ 道ノリナノダロウ )

ひと枝ごとに吹きかけられるものが
ここからは見えない
意味のないことはどこにもなく
計らいの深さを読み落としそうになる

雨はやがて音を捨て
暗闇を分け入り
ひとすじ 優しいものへと導いていく

( ワタシモ何処カエ 運バレテイルノカモシレナイ )

明日は いっそう深い青葉の連なり
光の腕に次々捕えられて






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十一の夏

2005/04/27 19:02




眠りたいのに眠れないのと
娘がいう
大人になること そして
死が怖いと

ものの気配にひかれ 暗闇に出ると
葉っぱを一枚一枚光らせて
青紫の月がいた

草原を駆ける虎や豹も
背中に感じる脅えた夜を
もっているのだろうか
青く冷たい光を皮膚に突き刺し
獲物に喰らいついてゆくのだろうか

歌ってやりたい子守り歌が
真夜中を過ぎても
まだ
みつけられない






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